わたしの意地悪な弟

 放課後になり、教室がざわめきに包まれる。

 わたしは教室の前の扉を見て、鞄から携帯を取り出した。確認してもメールも届いていない。

 半田君と樹がそれらしい会話を交わしていたとしても、わたしは昨日から樹と一言も言葉を交わしていない。

 いつもなら彼が迎えに来るが、今日はその気配も全くない。

 先に帰っていいんだろうか。

 一か月続いた習慣はわたしの判断を鈍らせる。

 だが、状況を改めて考え直し、そもそも約束しているわけでもないと言い聞かせた。

「利香、一緒に帰ろう」

 鞄を持ち、帰り支度を整えている利香に声をかける。

 彼女は苦笑いを浮かべた。

「いいけど、樹君と喧嘩でもした?」

「してないけど」

 わたしは口ごもる。そもそも彼にキスをされそうになり、今のような状況になっているとはいくら友人でも言いだせない。

「喧嘩したら仲直りしたほうがいいよ」