わたしの意地悪な弟

 彼はわたしを抱きしめていた手を解いた。

 わたしも彼に触れていた手を離した。

 わたしは体を動かし、彼を見据える。

 樹の顔はいつになく真っ赤に染まっていた。

 わたしの顔も同じように赤く染まっているだろう。

「わたしのことを好きでいてくれたなら、言ってくれればよかったのに」

「でも、中学生や、高校に入ってすぐに告白していたら、どうした? 千波が俺を好きになったのは、高校に入ってからだよね」

「中学生って、樹は小学生のときからわたしが好きだったの?」

「好きだったよ」

 少しの沈黙の後、樹がそう答えた。

 小学生のときを思い出しても、樹がわたしを好きだと感じる要素は何もなかったはずなのに。

「断ったかも。でも、断らなかったかもしれない」

「千波は断ることもできず、俺を避けた気がするよ」

 そんなことないと言いたかったが、そうしてしまっていたかもしれない。

 そもそもそんなこと考えたことがなかったのだ。

 樹がわたしの頭を撫でる。