わたしの意地悪な弟

「好きだからキスしたんだよ。ずっと千波にもっと触れたくてたまらなかった。俺だけのものにしたいと思っていた。今だってもっと千波に触れたいと思っている」

 彼のわたしを抱きしめる手が強くなった。

「キスして、ずるずるとこうなっていって、自分でも順序を間違っていたのは分かっていた。でも、いざとなると言葉が出てこなくなったんだ。

断られたら、一生立ち直れない気がした。千波が俺のことを好きになってくれるわけないと思っていたから。

そうこうしているうちにいろいろあって、言い出せないままになってしまった。

半田先輩に告白されているのを知った時、千波を忘れるいいチャンスだと思ったんだ。どうしょうもない男に引っ掛かったら、忘れるものも忘れられなくなるから」

 わたしを抱きしめる樹の手に、自分の手を重ね、目を閉じた。

 夏以降の樹との出来事を脳裏に思い描いた。

 あのわたしを姉だと知らしめた言葉に、そんな意味があるとは考えもしなかった。

「わたしだって同じだよ。樹に好きだと言ったら、もっと傷つきそうな気がして言えなかった」