わたしの意地悪な弟

 驚きの声が届いた。

 わたしは彼の胸に顔をうずめた。

 樹は今、困り果てているだろう。恋愛感情を持ってもいない姉に好かれていると知ったのだ。

 だが、わたしの期待する言葉はいくら待っても聞こえてこなかった。

 彼にとってよほど気持ち悪いことだったんだろう。

 義理とはいえ、幼いころから一緒にいた姉に好かれるなんて、ありえないだろう。

「ごめん。今日限り忘れるから、もう気にしないで」

 わたしは精一杯取り繕いの言葉を紡ぎだし、樹から手を離す。

 そのまま部屋を飛び出す予定だったが、次の瞬間、わたしは樹の腕の中にいた。

 背中越しに樹の温かさが伝わってくる。

「何で抱き付くのよ。離して」

 わたしは混乱しながらも、現状を理解してもがくが、彼は抱きしめる力を強める。

 わたしが動いただけではびくともしなくなっていた。

「話が終わったら離す。だからそれまで我慢して」

 樹は聞いているだけで切なくなりそうな言葉を綴った。

 わたしは今から彼に振られるのだろう。その瞬間を覚悟して、唇を噛んだ。