わたしの意地悪な弟

 彼の顔は見えない。だが、その間の抜けた言葉に、空笑いしか出てこない。

 そこには自分である可能性を全く考慮に入れていないのだろう。

 樹の言葉によって半ばやけになったわたしの心は、自暴自棄になりもっと苦しむことを望んでいた。

 わたしの苦しみを樹に押し付けて、彼も同じように苦しんでほしかった。

「よく知っていると思うよ」

「木崎とか?」

「樹はわたしに傷ついてほしくないと言ったけど、わたしを一番傷つけているのは樹なんだよ」

「そっか。まあ、いろいろしてしまったから、思い当たることはあるよ。今更どうしょうもできないけど、何かできることがあれば償うよ」

 樹の手がわたしの体から解かれたが、わたしは樹の背中に手を回す。

 わたしは彼を抱きしめていた。

「姉さん?」

「だったらわたしを振って。大嫌いだと」

「振るって。何でそんなこと」

「わたしが好きなのは樹なんだよ」