わたしの意地悪な弟

 気づかなければよかった。

 気づかなければ、樹を弟だと思い、これから先も普通に生きていけたのかもしれないのに。

 こんなのはただ苦しいだけだ。

「部屋に戻るね」

 わたしは目頭が熱くなるのを感じ、そのまま樹のわきを駆け抜ける。

 そして、ソファに置いていた荷物を手に取ろうとする。

 だが、わたしの指先がバッグを弾いた。バッグは紙袋を巻き込みながら、中身をまき散らしていた。

 鍵を取りだしてから、バッグのチャックを閉めていなかったのだ。

「大丈夫?」

 樹は掃除機の電源を着ると、わたしのところまで駆け寄ってくる。

「大丈夫だから」

 中身を拾い集めるわたしの前に荷物が差し出された。

 わたしが広げたバッグの中身と、もう一つ。

 あのマフラーの入った紙袋もあった。

「これも」

 わたしはそれを受け取ろうとした手をひっこめた。

 それを見たらまた部屋に戻って泣いてしまいそうだったからだ。