わたしの意地悪な弟


 わたしは思わず自分の両頬に触れた。

 そうはっきり断言されると恥ずかしいものはある。

 そんなにわたしは分かりやすいだろうか。

「それ、弟さんに買うの?」

「どうかなって思って」

「いいんじゃないかな。似合うと思うよ」

「でも、何枚か持っているから、別のがいいかな」

「きっと藤宮から贈られたら喜んでくれると思うよ」

 彼はわたしと樹が距離を置いているのを知らないのだろうか。

 わたしと彼の会話に樹の話題が出てくることはほとんどなかった。

 半田君が笑顔で言ってくれたため、迷う心を言葉にするのもはばかられ、彼と一緒に店に入ることにしたのだ。

 わたしが店内に入るのと入れ違いに、そのマフラーに大学生くらいの男の人が手を伸ばしていた。

 あれを買うのだろうか。

 彼はそれをしばらく触ると、元の位置に戻し、店の奥に消えていく。

 わたしは思わずそれを手に取った。

 だが、半田君と目が合うと、彼に笑われていた。

「買ってきたら?」

「どうしよう」