わたしの意地悪な弟

 彼女の目にうっすらと涙が浮かんだ。

 樹の用事は彼女だったのだろう。

 そして、彼女はいてもたってもいられず、わたしに会いに来たのだ。

 同時に樹が今朝彼女を振っていたということに驚きを隠せなかった。

 彼女は目にたまった涙を拭った。

「こんなところで泣いたらダメですよね」

 彼女はわたしから目を逸らす。

「失礼かと思ったんですか、お姉さんかとも聞きました。そしたら違うと。好きな人がいるからわたしとは絶対に付き合えないと断られたんです」

 なぜそこでわたしの名前が出てくるのかよくわからなかったが、彼女の口から発せられた好きな人の言葉に、胸が針に刺されたように痛んだ。