わたしの意地悪な弟

「俺は先に行くよ」

 何かを感じ取ったのか、気を聞かせてくれた半田君の言葉に頷いた。

 彼女は頭をぺこりと下げた。

「ごめんなさい」

「気にしないで。何か用だったの?」

「先輩に聞きたいことがあるんです。お時間は取らせません」

「いいけど、どこで話をする?」

 彼女は会釈すると歩き出す。そして、自販機の近くまで来ると、胸に手を当て、深呼吸をした。

 幸い、朝の時間ということもあってか人気がない。

「お呼びしてしまって申し訳ありません。聞きたいことがあったんです」

「何?」

 十中八九、樹のことだろうと思いながら、気づかない振りをして問いかける。

「藤宮君の好きな人って誰かご存知ですか?」

「好きな人……? 佐々木さんじゃ」

 わたしは慌てて口を押えた。今までずっとそう思い込んできたためだ。

 それは利香には一応否定されていた。

 だが、樹の言動からして、彼女以外の誰かとは考えにくい。

「分からない」

「そうですか。お姉さんならご存知かと思ったんですが……」