わたしの意地悪な弟

 昇降口で半田君と顔を合わせる。

 彼は意外そうな顔をして、わたしを見た。

「今日、弟さんと一緒じゃないんだ」

「今日は用事があるらしくて、早めに登校したみたい」

 彼は一瞬、眉根を寄せた。

「昨日のことが関係あったりする?」

 わたしはどきりとしながらも、あいまいに微笑んだ。

「そんなことないよ。たまたまだよ」

「ならよかったけど、二人の関係がこじれたら申し訳ないからさ。俺のただのわがままで」

「そんなことないよ」

 わたしは苦笑いを浮かべた。

 本当に彼はいい人なのだと実感させられたのだ。

 彼をふったわたしのことをこうして気にしてくれていた。

 上履きに履き替え、半田君と教室に向かいかけたわたしの名前が背後から呼ばれる。

 その時、わたしに流れる時間が一瞬とまっていた。

 わたしを呼び止めたのは、佐々木さんだったのだ。

 彼女は長い髪の毛を整えると、短く頭をさげた。