わたしの意地悪な弟

 翌日、既に樹の姿は家になかった。

 彼は母親に、友達と約束をしていると言い、早く出かけたそうだ。

 夕食時も樹はわたしと顔を合わせようとはしなかったため、ある意味想定できたことだ。

 わたしはいつも通りの時間に家を出ると、天を仰いだ。

「本当にわがままなんだから」

 中学の時は間に日和が入ってくれていたからだろうか。わたしと樹の関係がここまでこじれることはなかった。

 彼が同じ高校に入ってからは、仲良くなっては喧嘩をしての繰り返しだ。喧嘩といっても、樹が一方的に怒っていたような気がした。

だが、今回のはわたしが悪い。彼の発言は弟としては何もおかしくない。付き合うなとか、わたしが期待している言葉を口にすることの方がおかしいのだ。

 わたしと彼は姉弟なのだ。

 それでもわたしはやっぱり樹が好きで、きっとこの恋心も、わたしと彼の関係をややこしくしている一因なのだ。

時間が経てば、この思いを過去にできるのか。樹への気持ちに気付いたばかりのわたしにはよくわからなかった。