わたしの意地悪な弟

「半田先輩優しいし、いい人だし、俺も安心して任せられるよ」

「そうだね」

 そう応えるが、もうわたしは断ってた。

 樹を忘れられないから。

 一方的で抑圧的な態度を取られたほうが何倍もよかった。

 半田君の趣味が悪いだの、断れだの言ってくれたほうがいい。

 樹の言葉は弟としてはごく当然で、わたしに興味がないということを知らせるものだった。

 分かっていたはずなのに、今更、そんなことで胸を痛めている。

 あきらめないといけない、過去にしないといけない。いくら心を取り繕ろうとしても、すっとその頑張りが砕け散っていった。奇跡のようなものに賭けてきたわたしの罪なのだろう。

 一方的な独占欲でも良い。付き合うなと言ってほしかった。

「前向きに考えるよ」

 わたしは断ったとは言い出せずに樹に嘘を吐いた。

 そんなことは今のわたしには無理だと分かっていたし、半田君にも失礼なことを言っていると分かっていた。

 わたしは精一杯の笑みを浮かべた。

 一瞬、樹の顔が引きつるのが分かったが、それ以上彼の顔を見ることなく部屋に入
った。
 暗い部屋の中で座り込んだとき、目から熱いものが零れ落ちているのに気付いた。

 それを床にこぼさないように、何度も手の甲で拭った。