わたしの意地悪な弟

 そう言い、寂しそうに笑う半田君の言葉に胸をわしづかみにされたような気がした。

「弟だもん」

 再び、半田君は寂しそうに笑った。

「一つだけわがまま言っていい?」

「どうしたの?」

「まだ時間があるから、少し歩かない?」

 わたしは彼の提案に頷き、彼のあとを追う。

 彼は階段をおり、家庭科室のそばを抜け、一階の渡り廊下のところで足を止めた。

 わたしの髪を乱していく冷たい風が人を遠ざけ、話をするには絶好の場所に変えていた。今生徒の登下校が多い時間でも人気がほとんどない。

「ごめん。ただ、人に聞かれたい話じゃなくてさ」

「いいよ。何?」

「本当は言わないでおこうと決めたんだ。でも、俺もいい加減踏ん切りをつけたかった。自分勝手なのは分かっているけど」

 わたしは意味が分からずに彼を見る。

 彼は苦しげな表情で言葉を絞り出す。

「ずっと好きだったんだ」

 わたしは思いがけない言葉に、虚をつかれたように彼を見ていた。