わたしの意地悪な弟

 そのとき、教室の扉が開き、半田君が入ってきた。

 わたしは小さな声をあげるが、すぐに彼は教室を出て行った。

「半田君に昨日のことを謝ってくるね」

「いってらっしゃい」

 わたしは利香に見送られ、教室の外に出た。

 わたしは廊下を急ぎ足で歩く半田君を呼び止めた。

「今、時間ある?」

 彼はわたしを見ると、意外そうな顔をした。

「どうかした?」

「昨日、ごめんね」

「いいよ。弟さん、熱があったんだよな」

 わたしは頷く。彼にも夜メールを送っていたが、直接謝りたかったのだ。

「体調はどう?」

「もう良くなって学校には出てきたよ」

「そっか。よかった」

 わたしも頷く。

「本当に藤宮って分かりやすいな」

 半田君が寂しそうに笑う。

「何が?」

「ここ最近で一番幸せそうな笑顔をしている」

 わたしは思わず頬に手を当てた。

「弟さんと仲直りできたんだな」

「喧嘩していたのかもよくわからないけどね。一応、できた」

「藤宮のそんな顔を見れてよかったよ。花火大会のときと二度目かな。やっぱり弟さんには敵わないな」