わたしの意地悪な弟

「何で佐々木さん?」

「樹と付き合っているんだよね」

 利香はあっけにとられたようにわたしを見る。

「ずっとそう思っていたの?」

「先週辺りからはずっと。樹もその気だったみたいだもん」

「変に意固地だね。多分、付き合ってはないと思うよ。樹君もそう言っていたもの」

「そうなの? よく二人で遊びに行っていたみたいだけど」

「樹君には樹君の思うところがあるんじゃないの?」

「だったら、なぜ機嫌が悪いんだろう」

 佐々木さんが振り向いてくれなくてというのはあり得ないだろう。

 彼女から樹に告白をしていたのだ。

「千波はもう少しわが身を振り返ったほうがいいと思うよ」

「わたしが樹を怒らせたの?」

 彼が冷たくなった前後に思い当たることがちらほらあるのが辛いところだ。

「半分あたりで半分はずれかな。ま、今朝いつもどおりだったなら、気にしないでいいと思うよ」

「そうだね」

 わたしは利香の言葉に理解を示しながらも首を傾げた。

 とりあえず気にしなくていいということなんだろう。