わたしの意地悪な弟

「今日、帰り迎えに行くから」

「いつも通り昇降口でいいよ。病み上がりなんだよ」

「平気だよ。昨日、姉さんが看病してくれて元気になった」

 いままでの樹の言葉に心を和ませる一方で、自戒した。

 わたしの願う今までと同じにはいかないだろう。

 樹には彼女といってもおかしくないほど、親しい相手がいた。

 そのことを忘れないようにと何度も心に言い聞かせた。

 教室に入り、自分の席に行くと利香がにっと明るい笑みを浮かべる。

「今日は仲良さそうだったね」

「少しね。ホッとしたかな。病み上がりで弱気になっているだけかもしれないけどね」

「千波は最近、樹君が機嫌が良くなかった理由に気づいてないんだろうね」

 利香は困ったように笑う。

「利香は知っているの?」

「樹君ってかなり分かりやすいもの」

「日和もそんなことを言っていたけど、わたしにはさっぱり分からないよ。佐々木さんとうまく言ってないとか?」

 わたしは遠慮がちに問いかける。