わたしの意地悪な弟

「本当に休まなくて大丈夫?」

「姉さんも一緒に休んで看病してくれるなら、休んでもいいよ」

「何言っているのよ。そんなのお母さんが許さないって」

 わたしは慌ててそう口にする。

 樹の右手の人差し指がわたしの額を押した。

「冗談」

 本当なら怒ってもいいのに、少し前のような樹の行動に、思わず心がほっとしていた。

「どうかしたの?」

「何でもないよ」

 わたしと樹はリビングから顔を覗かせた母親から逃げるようにして家を出た。

 わたしたちは家の外に出ると、互いに顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。

「本当に樹は相変わらずなんだから」

「どういたしまして」

 彼はにっと笑った。

 こうして彼と和やかな時間を過ごすのは、ものすごく久しぶりのような気がした。

 学校が見えてきたとき、樹が思い出したように言葉を発した。