「じゃ、そういうことだから」

 わたしは彼の手が離れたのを見逃さず、その場を立ち去る。

 彼のわたしへの返答は、暗に彼女と付き合うと告げていた。

 食事の時もわたしは意図的に彼と目を合わせようとしなかった。

 彼のお姉さんになりたかった。

 兄弟になって、彼女ができたと聞かされて、からかえるような関係を望んでいたはずなのに、そんな関係を、台無しにしてしまったのもわたしだったのだ。

 わたしは部屋に戻ると、行き場のない気持ちを抱えて泣いていた。

 わたしと樹の微妙な関係とはお構いなく、半田君の誕生日の計画は着々と進行していた。

 半田君へのプレゼントはケーキで決定した。その日集まるメンバーの希望を聞いたうえで、チョコレートケーキになり、予約も済ませていた。

 樹と佐々木さんは付き合っていることを隠しているのか、樹が返事を保留しているのかは分からないが、二人が付き合っているという噂は流れていても、事実としては伝わっていなかった。

わたしも幾人かに真相はどうなのかと聞かれたが、分からないと答え続けていた。それは嘘ではない。

 樹と登下校を一緒にしていても、佐々木さんの話は一切出てこなかった。

 彼女の気配を感じることさえもなかった。

 わたしは樹と仲直りができないまま、半田君の家に行く日を迎えた。