得意げな彼女の言葉に促され、一瞬、蜘蛛のように自分が樹にくっついているのを想像し、気持ち悪くなってきてしまった。

 だが、樹を好きな女の子の間では、血のつながない姉にしつこくつきまとう弟の存在を認められないのか、わたしが樹にぞっこんだと言われていることも知っている。

それを直に聞くと複雑ではあるが……。

 彼を好きというフィルターは特殊なのか、彼女の激しい勘違いの賜物なのか、わたしはいつの間にかブラコンに仕立て上げられるようにさえなっている。

 彼女たちにしてみたら、彼はそんな年甲斐もなく弟に構ってもらおうとする姉を気遣う優しい弟といったところだろう。

 実際はわたしのことを姉と思っているのかと怪しいレベルだ。便利な暇つぶしの相手とでも思っているような気はする。

 本当、何を考えているのか分からない。

 足音が遠ざかっていくのを確認し、再び階段を下りる。

 昇降口で靴を履きかえると、校舎の裏庭まで行く。そこにベンチにボーっと座っている樹の姿を見つけたのだ。