樹はあまり家から出ず、休日は家で過ごすことが多かった。

だが、文化祭が終わったあたりから、日曜日に外出するようになったのだ。そうはいっても数えるほどなので、たまたまという可能性も否めない。

「誰と?」

 わたしは複雑な気持ちで思わず問いかけていた。

「友達だよ」

 彼は他人行儀な笑みを浮かべると、階段を下りていく。

 わたしは樹が外に行くのを待ち、階段を降り始めた。

 リビングにはソフトクリームを食べている日和の姿があった。

 彼女はわたしを見ると、続きを口に運ぶ。

 両親は買い物で、少し前に出かけていた。

「最近、樹、よく出かけるよね」

「そうだね」

 彼の名前に胸を痛めながらも、気づかない振りをする。

「樹のあとをつけてみたい?」

「何言っているの? 友達と会うと言っているのに、そんなことをしたらおかしいじゃない」

「あとをつけたいなら、つきあってあげようかなと思ったんだけど」

「だから、そんなことないから」

「お姉ちゃんは樹のことどう思っているの?」

「どうって日和と同じだよ。弟というか、兄弟だよ」