わたしの意地悪な弟

 わたしは慌てて辺りを見渡すが、幸い周囲には誰もいなかった。

「思いますよ」

 樹はそうにこやかに告げる。今朝の会話が思い出され、わたしは気恥ずかしさを感じながらどう反応していいか分からずに目を逸らす。

「樹君はどういうところが特に思う?」

「利香、恥ずかしいからやめて」

「全部かな」

 樹はしばらく考えると、そう言葉を漏らす。

 わたしの顔はものすごく真っ赤になっていたと思う。

 それくらい顔が熱い。

 それからは取り留めのない会話をし、利香と交差点のところで別れる。私達は家に帰ることになった。

 二人きりになって、樹に甘い言葉を囁いてほしいと思っても、彼との会話は味気ない。

わたしは物足りなさを感じていた。自分からは言い出せない。樹はわたしとの関係をどうしたいと思っているのだろうかという考えが頭を過ぎる。

だが、彼の言った言葉に勇気づけられながらも、聞きたいと思っても内容が内容だけに外でするには憚られた。