わたしの意地悪な弟

 放課後、亜子に別れを告げ、入れ違いに亜子のところに岡部君がやってきた。

 わたしと利香は一足先に教室を出ることにした。

 階段のところで樹に遭遇する。

「じゃあね」

 そう言い、立ち去ろうとした利香を樹が呼び止める。

 利香は意外そうな顔をして振り返った。

「先輩も一緒に帰りませんか?」

 利香はわたしと樹を交互に見ると、にやりと笑う。

 何か嫌な予感がする。

「せっかくだから、そうしようかな」

「余計なこと、言わないでよね」

 わたしは昇降口で靴を履くために樹と別れた時、利香にそう念を押す。

「分かっているよ」

 彼女はそう笑っていたが、わたしの期待は即座に裏切られることになった。

「千波って可愛いと思わない?」

 学校の外に出ると、利香はそう樹に問いかける。

「ちょっと利香」