わたしの意地悪な弟

 さすがに二度も繰り返されると、思わずその理由を聞いていた。

 その理由としてぱっと思いつくのは浴衣だ。

 わたしは似合っていないとは思わないが、樹の目にはそうは映らなかったのだろう。

「あまりに似合ってないから? 馬子にも衣装だよね。着替えてきたほうがいいかな」

 わたしは若干ショックを受けながらも、その気持ちをごまかすために自由なほうの手で、頭をかく。

「違う。可愛すぎて、誰にも見せたくない」

 思いがけない言葉に、わたしの頬が熱くなる。

 今までブスと言われたことがあったが、可愛いなんて言われたことは一度もなかった。

 化粧をしているわけでもないし、その姿はいつもと変わらない。

「そんなことないよ。浴衣は可愛いけど、わたしはいつも通りだもん」

「千波は俺にとってはそんな浴衣とは比べ物にならないくらい、一番可愛いよ」

 樹はわたしの耳元に唇を寄せ、そうささやいた。

 その言葉に驚き樹を見ると彼の瞳に戸惑うわたしの顔が映し出されていた。