わたしの意地悪な弟

 わたしは驚きのあまり、彼の名前を呼ぶが、彼はそんなわたしにおかまいなしにすたすたと歩き出す。

 一応、花火大会の会場に近づいてはいるが、一般的に通る、花火大会に行くコースとも若干離れている。

 利香たちとは花火大会の会場の近くで待ち合わせているが、そちらの方角とも違っていた。

「どこに行くの?」

 わたしが聞いても樹は返事をしない。

 彼は細い道に入っていくと、しばらく歩き足を止めた。

 目の前にあるのは住宅地の中にある、植物の生い茂った緑の豊かな公園だ。

 花火大会のためか、たまたまなのか、人気が全くない。

 彼はそのベンチに無言で腰を下ろした。

 わたしも彼の隣に腰を下ろす。

 樹を見るが、彼はわたしと目を合わせようとしなかった。

 無理に家から連れ出したことを怒っているのだろうか。

 わたしは拳を握ると、天を仰いだ。
 樹はポケットから携帯を取りだし、何か操作をしていた。

「早く花火が始まると良いね」

「始まらないほうがいい」

「始まらないと家に帰れないよ」