鈍色の雲が太陽を隠す。少し湿った空気が肌にまとわりついて、なんとなく鬱陶しい。でも、風が吹くと冷たくて、身を強張らせた。4月の朝は寒い。仕事へ向かう人達の中に紛れて駅へ向かう。
ずっとずっと、考えていた。朔良に言ったこと、杏子に言われたこと。頭の中で何度も何度も反芻して、その度にいつまでも出口の見えない迷路を進んでいるような気分だ。どちらが右か左かどころか、どちらか上か下かもわからない。
とうに私一人で考えられるキャパを超えている。なのに、誰にも頼れない。誰にも話せない。行き詰った道の前でずっと足踏みしている。はあ、と大きく溜息を吐いた時、声がした。
「おはようございます。随分と早いですね」
顔を上げるより先に誰か分かった。その瞬間、自分が今までどこに向かって歩いていたかを知る。
「木花.......」
誰にも頼れないなんて、そんなことなかった。誰にも話せないなんて、そんなことなかった。行き詰った先で答えを導いてくれる人を本当は知っていた。
今まで、どうやってここへ来たのか、全然覚えていない。でも、わたしはいつの間にか学校に向かって歩いていたらしい。きっちりと制服まで着て、木花に会いに来るつもりはなかったなんて言えないくらいに。
学校の門の前で待っていてくれたということは、木花はこういうことになると予想していたのだろうか。その気になったらまた来てと言っていたことも考えると、ある程度予想していたとしか考えられない。
「あのさ、私どうしていいか分からなくて......」
いつもみたいに話せるつもりでいたのに、なんでだろう。目頭が急に熱を持ったようになって、動揺した。抑えていた感情が、溶けだしたみたいだ。私って、こんなに弱かったんだ。知らなかった。


