恋風吹く春、朔月に眠る君



意味が分からない。私のことを朔良が大切にしてるからって何だっていうんだろう。だって、それなら楓も朔良は大切にしているでしょう。朔良は楓なら良かったのにって言ったんだ。

私以上に大切だって思ってるんじゃないの。そんな当たり前を言われても、悲しくなるだけだ。そんなことを楓に言われても、惨めになるだけだ。


「何が言いたいのか全然分かんないよ」

「はあ、もう。一度だって喧嘩したことない幼馴染と喧嘩して、どうしていいのか分かんないのは朔良も同じだってことだよ。分かったらさっさと仲直りしなよ。じゃないと家の中の空気が悪い」


すっぱり言い切ると楓はなんでこんなに二人とも面倒なんだとかなんだとか言いながら出て行った。やっぱり、夕飯を食べる気にはなれなくて、ベッドに寝転がった。きっと、楓もそれを選べるように出て行ったんだろう。口は悪いけどなんだかんだ言って、楓は優しいんだ。


「でも、楓が言うことはやっぱり分かんないよ......」


静かになった部屋で一人ごちる。朔良もどうしていいか分かんないんだって言われても、私がほぼ一人で勝手に怒っただけで何も悪くないんだ。そもそも私も同じことをしていたのに、自分のしていたことは棚に上げてそれを指摘するなんてどうかしてる。

朔良なんて大嫌いだって言ったんだから、怒るのも当然だ。荒れてるってどんな風に荒れてるんだろう。仲直りするために会いに行って、また帰ってって言われたらどうしよう。朔良が荒れてる時って絶対に話なんてしてくれないんだ。

頭冷やすから待ってって言って、それで結局勝手に自分で飲み込んで見切りをつける。それを知っているから余計にどうしていいか分からない。それが結局、逃げているだけだとしても。


「こうやって、ずっと一人で考えてるからだめなんだって分かってるのになあ」


額に手を当てもう一度溜息を吐いた。杏子が怒ったのはきっと、こういうことなんだ。杏子にも、朔良にも、楓にも、彩香にも、未希にも、他の仲のいい子にも、誰にも相談という相談ってしたことがないかもしれない。


「私って相談できる友達もいなかったんだ......」


気付いてしまった事実がとてもショックで、その日もやっぱり、なかなか寝付けなかった。