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家に帰っても家族は誰もいなかった。でも、暫くして帰ってきたみんなは口々にどうしたのかと言う。その度に口を噤んだ。楓も、お母さんも、お父さんも、鬱陶しいなんて思う私にまた溜息を吐いた。みんなは別に悪くない。
言い聞かせて、それでも溜息が出そうになってベッドに寝転ぶ。そこへ部屋の扉をノックする音が聞こえた。すぐにその主は分かった。
「双葉、ご飯だって」
「うーん、今はいいや」
「あんたねえ.......」
苛立つような声と共に扉が開いた。眉間に皺が寄ってる。これは面倒なことになったなと起き上がる。
「はいはい、ごめんって、行くから」
「あんたのそういうとこ嫌い」
そういうとこってどういうとこだ。黙りこくって何も言わないことか、それとも面倒そうだからって適当にして言うことを聞くことか。たぶん、どっちもだな。
「楓ははっきり言うね」
「双葉ははっきりしないね。誤魔化すのが得意なとこがほんと朔良そっくりで腹立つわ」
びくりと方が揺れた。今、一番聞きたくない名前。杏子に朔良に対する気持ちと同じことで怒られたのを思い出した。全然似てないのに、嫌なとこだけ私たちは似てるのかもしれないと初めて思った。
「あいつのとこ行ってから様子がおかしいから、メッセージ送ったんだけど返ってこないし、喧嘩したんでしょ。珍しいから黙ってたけどさ、ちゃんと仲直りしなよ」
出来たらそんなものとっくにしてる。初めて喧嘩したんだよ。私達、一度も喧嘩したことなかったんだよ。ううん、互いの都合の悪いこと、ずっと誤魔化してただけなんだ。
私達って一度も本音喋ったことなかったんだ。そう思うと瞼が熱くなった。いきなり泣き虫になって嫌になる。
「気付いてないみたいだから良いこと教えてあげる。さっき、朔良に会いに行ったらすっごい荒れてたよ。びっくりした。双葉と喧嘩したことショックなんだよ」
「嘘だ。荒れてるのはきっとお父さんが帰ってきたからだよ」
「違うよ。お父さん帰ってきたのは、まあ、嫌になってるかもしれないけど、本当に今日荒れてた理由は違う。双葉が思うより、朔良は双葉のこと大切にしてるんだよ」


