その声のせいで、出かけざるを得なくなった。いや、そうでなくても行かなければいけなかったけれど。杏子が家に来る前なら体調が悪いからって断れば良かった。でも、流石に約束を忘れてすっぽかして、迎えに来てくれた友達を帰すのは流石にできなかった。
それでも支度するからって待たせてるのに用意は遅かったと思うし、ショッピングモールへ向かう道中もよく上の空になってることが多々あったと思う。
だけど、初めて朔良と喧嘩したんだ。こんなのどうしていいか分からない。これで一生幼馴染の縁が切れたりしたらどうしよう。そんな馬鹿なことと思うかもしれないけど、それくらい朔良との関係を私は手放したくないんだ。
私はどうすればいいんだろうって昨日からずっと考え込んでる。もしかしたら朔良は気にしていなくて、昨日のことなんてなかったように接してくるかもしれないのに。
余裕がなさ過ぎて何も考えていなかった。横で話す杏子が何を考えていたか、何も分かっていなかった。
「朔良くんと喧嘩したの?」
それは唐突な質問だった。ショッピングモールに行くはずだったのに、来たのはだだっ広い公園。なんでこんなとこにって言っても聞かずに奥へ入っていき、杏子が座ったベンチの隣に座ったときのことだった。まるでそれを聞くために此処へ来たみたい。嫌だなと思った。
何よりどうしてそんな質問が出てくるのだろう。私達は一度だって喧嘩したことがない。なのに、どうしてそういう発想になるのかという驚きと共に、違和感を覚える。
「なんで......?」
『知っているの?』とまでは言えなかった。言わなかった。思わず出た『なんで』を誤魔化すように、解釈の余地のあるような曖昧な聞き方をした。そうして探るなんて私はどこまでも狡い人間だ。試すように曖昧に笑うのも自然と出来る自分が怖い。
「楓ちゃんに聞いたの」
どうして、そこで楓が出てくるんだろう。なんで、楓はいつもいらないことをしてくるんだろう。苛立ちがふつふつと湧き上がってくる。でもそれ以上に、楓を鬱陶しいと、煩わしいと感じている自分に対して一番苛立ちを覚えた。
「双葉と連絡つかないんだけどどうしてるかって聞いたら、多分朔良と喧嘩してるからだって言ってた」
私が何も言わずとも杏子は答えを教えてくれた。私が言いたいことは分かっているとでも言うように。そして、最後に『朔良くんと連絡取れないらしいよ』と続けた。


