次に目が覚めたのは太陽が一番輝く頃だった。カーテンを閉め忘れたせいで、窓からの陽がとても眩しい。眠い目を擦ってどうにか起きた。
喉が渇いていたからキッチンへ向かい、コップに一杯の水を入れる。喉を鳴らして飲むと、眠気も落ち着いた。
家には誰もいなかった。楓は雪穂ちゃんとお出かけらしい。お母さんは買い物。お父さんの服がないからって、お父さんも連れていくとメモには書かれていた。
昨日からお母さんは何も言わない。どうしたって様子がおかしいことは気付いているだろうに、メモには私の為のことばかり。何も聞かずにいてくれることにホッとしながらも、罪悪感が募った。
でも、誰もいない空間が心地いい。今は誰とも話したくないし、会いたくない。私しかいないこの場所は寂しくて、朔良のことを考えるともっと暗い気持ちになったけれど、誰かと一緒にいるよりずっと楽だった。
と、そんな静寂を引き裂くように電話が鳴った。フリーダイヤルの何かだろう。もしかしたら違うかもしれないけど、私に用の電話じゃない。今は電話に出るのも億劫だ。大体の電話の内容だってお母さんにしか分からないことなのだからと放置した。
けど、まったく鳴りやまない。鬱陶しい。電話の音がずっと鳴ってるのはかなり不愉快だ。仕方ないと電話に出る。もしもし、と出した声は無意識にいつもよりワントーンほど落ちていた。
「もしもし、双葉?」
思っても見なかった声に驚いた。電話番号くらい確認すべきだった。電話の画面に映るのは携帯番号。しっかり覚えているわけじゃないけど、これは多分、杏子のものだ。
そう分かった途端、今日は私も杏子と出かける約束をしていたのを思い出した。昨日の朔良の誕生日と言い、杏子と遊ぶ約束と言い、私は忘れすぎじゃないか。まあ、今日は致し方ない理由があると言えばそうなのだけど。
「家出るの遅くなりそうって電話したんだけど、全然スマホの方の電話出てくれないから家電したんだよ。それでも出てくれないし、どうしようかと思った」
「ご、ごめん。すっかり忘れてた」
「そうだと思ったよ。だから、取り敢えず双葉の家向かってるんだけど......。あ、もう、ついちゃった」


