「それよりなんか顔がぱりぱりする」
ぺたぺたと顔を触るとべたっと手が引っ付くような感じと変に乾いている感じがした。それに顔も浮腫んでいる気がする。そこで漸く私は昨日、朔良の部屋を飛び出して帰ってきてから夕飯も食べず、お風呂にも入らずに自分の部屋に引きこもって声を押し殺して泣いていたことを思い出した。
暫くぼーっとしていたはずだけど、きっとその後は疲れて寝てしまったんだろう。時計を見ると夜中の2時半だった。流石にこのままもう一度寝てしまうと明日の朝は顔が大変なことになっているだろう。蒸しタオルと冷たいタオルで浮腫みを取ってから寝ることにしよう。
重い足を引き摺って1階に降りると、流石にみんな寝た後のようだった。顔の浮腫みを治して、お腹がすいたから何か少しだけ食べようとキッチンへと向かう。でも、その手前のダイニングテーブルに『起きてお腹がすいたら食べなさい』と書かれたメモとお皿の上におにぎりが二つ置いてあった。
夜中に起きてくるかもしれないと考えてお母さんが作ってくれたのだろう。普段、部屋に引きこもってご飯を抜いたりしないから罪悪感が芽生えた。普段しないことと言えば、私は朔良と一度も喧嘩をしたことがなかった。
朔良が意地悪することはよくあったけど、拗ねる私のご機嫌取りを朔良はいつも忘れたことはなかった。朔良が家族のことで荒れてる時はできるだけ傍にいたけど、朔良が望まないことを私は一度だってしなかった。そうやってお互いに丁度いい距離を保っていたんだ。
だから、衝突することなんて初めて。いや、単に私が勝手に怒って勝手に逃げただけに過ぎないのだけど。でも、こんなこと初めてなんだって今更気付いた。喧嘩して、この後私はどうすればいいんだろう。これっきり話すことがなくなったりしたら私はどうしていいのか分からない。朔良がいない生活なんて考えられない。
おにぎりを食べて、ベッドの中に入っても、その不安と恐怖が駆り立てられてなかなか眠れなかった。


