恋風吹く春、朔月に眠る君



「世間って結構狭いものだね。二人は買い出しの帰り?」

「そう。今日は司君のとこの弟君と一緒に弟の面倒見てくれたの。お陰で家事は捗ったんだけどお米がないの忘れてて、重いだろうからってついてきてくれた」


肩にお米を乗せた司は相変わらず優しいと思った。それにしても、二人はとても仲が良いようだ。知らなかった。一年近くも交流があったのに、私に知らせなかったのは意図的にだろう。

中学の時に急に別れて落ち込んでいたから言わなかったのか、それとも司が言わないでと言ったのか、どちらか分からない。でも、司がそう言ったのだとしたら、杏子は私達の終わりのことをどこまで知っているのだろう。


「どうかしたの?」

「え、いや、なんでもないよ」


急に黙り込んだ私を不審に思ったのかもしれない。咄嗟に誤魔化して笑顔を作る。


「重いの持ってるのに立ち話も申し訳ないから帰るね」

「うん、またね。朔良君も」

「またな」


二人と同じようにまたねと私達も告げて別れた。木花と話して前向きになれそうだった心がまた後ろを向いたような気がする。タイミング良く現れた司が咎めているようだ。当然だ。私はあの人を裏切った裏切り者だもの。


「やっぱり許される気がしないよ」


ずっと抱えていた秘密を木花に話したこのタイミングで会うなんて咎められているようにしか思えない。また心を縛る鎖が強くなった気がする。


「えっ? なんか言った?」


誰に言うでもなく零れたものを、隣にいる彼は掠め取ったらしい。考え事をしていて、隣にいるのさえこの一瞬で忘れていた。


「ん? なんでもないよ」

「そう? ならいいけど......」


朔良は不思議そうに首を傾げたけど、あまり気にした様子はなく他の話題へと移る。でも、あまり頭に入ってこなくて、朔良と別れても上の空で過ごした。