「でも、双葉さんには双葉さんの人としての尊敬できるところがあります。それを知ってくれている人はいます。ないものばかり数えても仕方ないですよ。自分が持っているものを見つけてください」
「そんなの分かんないよ」
「それこそ聞いてみるべきだと思いますよ。自分が知らない自分を、他人が解って持っていてくれたりするものです」
得意げにふふふと笑う木花は完全に年上みたいな存在だ。この前は同い年くらいに笑っていたのに、不思議な感じだ。木花の言うことは真っ直ぐで誤魔化せないだけでなく、心にすとんと落ちてくる。
「私は幽霊にもお礼を言いに来る双葉さんの変に律儀なところとか好きですけどね。人に対して真面目で素直で真摯ですよ」
真っ直ぐ私を見て告げる。目を逸らせない。それほどに意志が強い瞳をしていた。
「人に対して真面目で真摯はないよ。私、今まで話したことなかったんだよ。こんな話。いつも誤魔化してばかりで狡い」
「ええ、分かっているでしょう。それをすごく気に病んでいるでしょう。きちんと自分と相手を見つめているから狡いと思うんですよ。内側にあるそれを相手に言えたら貴女の想いは絶対に伝わります。だから、飲み込んできたことを言う勇気を出してください。自信がなくて蔑ろにしてきたものを大切にしてください」
木花の手が私の顔の方に伸びる。頬に触れた気がした。目には映るのに触ることが出来ない存在。それでもそこにいる。目の前で私を励ましてくれる。その手はきっととても暖かいのだろう。
「応援してますよ」
暗にそれは朔良に告白することを応援していると言っていた。私はそれに肯定を示せないまま、今日は帰るということになった。明日から五日間部活がないことを伝えると、その気になったらいつでも来てくださいと言って見送られた。


