恋風吹く春、朔月に眠る君



暫くすると、今度は朔良と楓が別れたという噂話が流れていた。それは朔良が楓に告白した次の日から、二人ともまったく話さなくなったからだった。どうしてなのかと聞いても、曖昧に濁すだけで分からない。楓は私にも距離を取って、家でも会話は減った。私達三人は初めてバラバラになった。そう思った。

何も知らない、分からない私には何もできなかった。それが悲しくて、恐ろしくて、憂鬱な気持ちになっても学校では元気に振る舞った。その時だけが憂鬱な気持ちを忘れられたから、めいいっぱい楽しみたかった。だけど、それは長くは続かなかった。


「別れよう」


唐突な終わりに私は言葉を失う。何が起こったの。いつものようにデートをして楽しい一日を過ごした最後、司は思いつめたように告げた。冗談だって言ってほしいのに、嘘を吐いているようには思えない。


「......なんで?」


必死に絞り出した声は震えていた。


「もう疲れたから」

「何が疲れたの? 私と一緒にいるのが嫌になったってこと?」

「違う。俺は双葉が好きだよ。でも、双葉は違うだろ」


疑問形でもない断定した言い方だった。何が違うというのだろう。私は司が好きなのに、なんで私の好きを司が否定するの。


「私だって司が好きだよ」

「違う!」


いつも優しい司が珍しく声を張り上げた。それがナイフになって突き刺さるようで怯む。


「双葉が好きなのは古館だろ」


何を言っているのか分からなかった。思ってもみなかったことを言うから、一瞬本当に同じ言語を話しているのかさえも分からなかった。


「何を馬鹿な事言ってるの。朔良は弟みたいなものだって言ったじゃん」

「聞いた。でも、ずっと前から双葉は古館のことが好きだと思うぜ」

「なんで決めつけるの。私嘘ついてないよ」

「嘘ついてないことは分かってる。でもさ、絶対これ言わないでおこうと思ったんだ。でもさ......幼馴染と言えど双葉と古館の距離おかしいだろ。俺だって好きなやつが他の男と俺より仲良かったら妬けるんだよ」


電気が走ったみたいだった。私と朔良の距離はおかしい。今まで一度も言わなかった優しい人が抱えてた本心は説得力があった。私がどれだけ恋愛じゃないと否定しても、周りからそう見られるのは当然なんだと初めて知った。馬鹿みたいに子供だった私の浅はかな考えが、ずっと彼を苦しめていたことを初めて知った。