「また余計な心配するんだから」
「余計じゃありません。心配は勝手にするものなんです」
「ありがとう。最近周りに誰もいなかったからちょっとだけ救われた」
安心したのか余分な力が抜けたようだった。ずっと気張っていたのかもしれない。楓は一人の方が楽なんだろうと思うことがあるけど、独りでも平気な振りをするのは違う。この状況は私が思うよりずっと苦しいよね。
「あ、でも、いつもこうやって現れなくていいからね」
「ええーっ、どうしようかなあ」
「二人とも待ってよ!」
反射的に振り向くと、慌ただしく足音を立て、大きな通学鞄に振り回されながら走ってくる朔良がいた。私たちの傍まで駆け寄ると、体力の限界を超えたのか膝に手を置いて大きく息を吸った。それを吐き出して、また吸ってを何度か繰り返して、息を整える。朔良は短距離走は得意だけど長距離走は苦手なタイプだ。体力がないから。
「なんで朔良がいるの?」
「あ、朔良のこと忘れてた」
「忘れてたって、酷いなあ。ちょっと教室いない間に楓がいなくなってると思ったら双葉が連れて帰ったって聞いて慌てて追いかけたのに......」
肩を下げて大きく溜息を吐いた。それはとても不憫だ。普段から楓は朔良の扱いが雑だが、それにしても置いていかれて忘れたで済まされるのは流石に可哀想だと憐れみの目を向けた。
「なんかね、朔良がついて回ってくるの」
迷惑だという体で話は進む。至極当然のように鬱陶しそうな表情をするけど、それを今更咎めようという気持ちはない。どうせ、朔良は言い返す。
「やだな、楓が寂しそうだから僕がついてあげてるんでしょ? その言い草はないんじゃない?」
「ふざけないでよ。私は一緒にいてほしいなんて言ってない」
「素直じゃないよね。嬉しいくせに」
「あんたほんと嫌い」
また始まった。一触即発みたいな状況だけど、よくある光景だ。それより、この会話の内容からして、独りでいる楓と朔良は一緒にいてくれたのだろう。
楓と朔良が同じクラスで良かった。これで少しだけ安心できる。楓は何でも一人でどうにかするから、誰か見てないと危なっかしい。楓の態度の悪さは、朔良に面倒をかけないように牽制しているのだろう。普段の私怨も含まれているだろうけど。
私が何も言わずに歩き始めると、二人もついてきた。こういうところは、しっかりしてるんだ。周りを見てないわけじゃない。煽り合うのは良くないけど今に始まったことじゃないし、喧嘩するほど仲が良いってやつだと思う。


