声変わりして低くなった声が、私の鼓動を早くした。振り向くと、想像した人物がいた。
「司、どうしたの?」
「今、先生に聞いたんだけど、明日急に昼休み委員会入った」
「えーっ、もっと早く言ってよ先生......」
「まじでありえねーよな。俺も驚いた」
困ったように笑うだけで、体が熱くなる。先刻、提出物出し忘れたと言って職員室へ行ったからそこで聞いたのだろう。私のために走って戻ってきてくれたのか、少しだけ息が荒い。
「取り敢えずそれだけ。なるべく早く知る方がいいと思って」
「わざわざありがとう。助かる」
「じゃあまたな」
「うん、また明日。ばいばい」
輝く笑顔とお別れをして、ほっと息を吐いた。私、おかしな動きをしていなかっただろうか。
「なになに、何やらいい雰囲気だよねぇ?」
肩に手を置かれて、にやにやと口許が緩んだ彩香が顔を出す。しまった。彩香と未希がいること、緊張で思わず忘れていた。
「同じ委員の宇津井くん。うんうん、あたしと同じだねぇ」
「彩香と双葉を一緒にしないの。でも、珍しいよね。双葉って、付き合ってほしいって言われて断り切れずって感じてたから、恋してるの初めて見たかも」
未希が言う通りだった。中学生になるまで恋愛なんて考えたことがなかった。中学生にもなれば、異性に興味を持って気にし始める。それを知ったのは、告白されたから。でも、私は二人も付き合ったのにどちらも本気じゃなかった。
どうしても友情の延長線になってしまって、恋の好きじゃないんだと元彼には言われた。間違ってなかった。幼稚な私には恋が分からなかった。
でも、初めて一緒にいて嬉しいのに、楽しいのに、胸が苦しくなるような人に出会えた。それが同じ体育委員の宇津井司(ウツイツカサ)君。これといったきっかけがあるわけじゃなかったけど、クラスを引っ張るようなリーダーで、細やかな気配りができるところがいいなあと思っているうちにいつの間にか好きになっていた。
「司、双葉って呼びあうほど仲良かったんだねぇ」
本当は名前で呼ぶ時、少し躊躇うくらいには緊張するんだ。司って呼んでって言われたから私もって言っちゃったけど、心臓に悪い。羞恥による居心地の悪さが口を閉ざしてしまう。
「こらこら、あんまりからかわないの」
「ええーっ、だってぇー」
「だってじゃない。双葉、応援してるね」
未希がふわりと温かみのある笑みを浮かべるから、恥ずかしいのに心がその笑みに包まれたかのように心が温かくなった。
「あたしも応援してるよ。お互い頑張ろうね」
三人で笑い合って、『好き』を確かめた。


