恋風吹く春、朔月に眠る君



中学生になると、私はバドミントン部に入って、三人で放課後遊ぶようなことはなくなった。それどころか、一年のクラスはみんなバラバラで、二年も私だけ別のクラスだったから、圧倒的に三人で会う回数は減っていった。


「ねぇねぇ、双葉、好きな人いる?」


放課後、わいわいとみんなが騒ぎながら部活へ向かう。それは私も例外ではなく、部活へ行くために急いで鞄に荷物を詰めていた。そこへ同じバドミントン部の彩香が迎えに来てくれて、唐突にそんなことを言い出したのだ。


「なに、急にどうしたの?」

「今度は同じクラスの佐伯に恋したんだって。めんどくさいから相手しない方がいいよ」


鞄を持って、帰る準備が終わったらしい前の席の未希が説明してくれる。未希も同じバドミントン部で、彩香とは小学校から一緒らしい。いち早く面倒なことになることを予感してツッコミをくれる未希は助かる。

少し前に隣のクラスのサッカー部のエースがかっこいいって力説してた気がするんだけど、未希のこの様子からして気のせいではないだろう。彩香に冷たい視線を送って、私も早く片付けてしまおうと動かす手を早めた。


「なんでまたかって雰囲気なの! 双葉みたいにモテないと恋しちゃいけないの!?」

「いや、そこまで言ってないけど......てか、私モテる前提で話進めないで」

「だって、モテるじゃん。彼氏二人もいるじゃん」

「それは語弊を招く言い方だからね? 現在進行形で二股してるわけでもないし、どっちも別れてるから」


彩香はよく言葉が足りない。適当なことを言うから、事実と違うこと言ってることがよくある。本人はまったくそのつもりがないから余計に疲れる。


「どっちでもいいの! 佐伯君優しいんだよ。同じ委員なんだけど、この前連絡忘れてミスった時も『大丈夫だよ』って笑顔で言ってくれるし、あれはジェントルマンだよ」

「それ絶対裏で馬鹿なやつだと思われてるから」

「もうっ、未希はいつもそうやって水を入れるんだからぁ」

「水を入れるんじゃなくて、水を差す、ね」


二人のコントみたいなやり取りを聞いていると、準備が終わった。


「よし、行こう」

「あ、全部流された」


横でブツブツと文句を言う彩香を完全に無視して、私と未希は教室を出る。拗ねながらやってくる彩香を待っていると、声をかけられた。


「双葉ー!」