「人の心というものは移ろうものです。世間的には良くないかもしれません。特にその人は気分が良くないでしょう。でも、恋はそういうものです。人を好きになることは幸せですけど、一方で残酷ですよ」
木花の言う通り、それでも好きなんだって朔良に言える勇気があれば良かった。どれだけ第三者に心象が悪くても貫けたら良かった。でも、私は他人の目をすぐに気にする人間だから、好きより悪者にならないことを選んだ。だからずっと、言わなかった。私がそれを選んだのだから、言えるわけがなかった。
「木花の言ってること分かるよ。残酷だよ。だから、選ばなかった。朔良は姉の楓のことが好きだから。聞いたことがあるの、告白してるところ」
「その二人は付き合ってるんですか?」
「ううん、付き合ってないと思う。すぐに逃げたから楓がどんな風に返事したのか分からないけど」
「では、今は分からないんじゃないですか?」
「分かるよ。ずっと一緒にいるんだもん。朔良は私が傍にいるよって言わないと、私の方を見てくれないから。私が手を差し伸べなかったら、迷わず楓のところへ行くから。楓以外の誰かは誰かでしかないんだよ」
いつもそうなんだ。私が眼中に入ることはない。私が手を差し伸べる度に見ているのはもしかしたら楓かもしれないって自分の容姿さえも憎くなるくらいには、分かってる。
私の好きはみんなのように綺麗な色はしてなかった。私の中のいろんな葛藤が何度もそれを汚して、歪になって、これを口にしていいものかずっと分からない。
「でもね、それより私.......」
今まで口にしたこともなかった。楓も朔良もそんなこと言わない。でも、私は蚊帳の外なんじゃないかって、ずっと思ってたんだ。自分に自信がないから、芯を持っている人の近くにいること、本当はずっと苦しい。でも、こんなことを思う私はきっと間違ってると知ってたから言わなかった。
「それより私、ずっと自信がなくて二人の隣にいていいのか分からないんだよ」


