「なんていうか、お守?」
「お守ってなんじゃそりゃ。意味わかんないんだけどー」
不満そうに足をばたばたとさせるのを見ながら、曖昧な笑みを返すしかない。こればっかりは、馬鹿正直に話せるわけではないから。
「まあ、暫くだよ。春休み開けたら終わるんじゃないかな」
「ええーっ、もったいない!」
水筒をばんっと音を立てて床に置くから吃驚した。なんでそんな力込めるんだろう。勿体ないの意味も分からない。
見るからに私は怪訝な顔をしているだろうに、彩香は気付く様子もなく興奮気味に訴えた。
「古館君ってさあ、物静かでそんなに目立つわけじゃないけど、中世的で整った顔してる方でしょ。それにピアノすっごく上手だから陰ながら好きって人は少なくないんだよぉ」
それは私も聞いたことがある。朔良は上っ面は良いから良いと思う人がいないわけじゃないことくらい分かる。
「あーあ、あたしもあんな幼馴染欲しかったよ。頭良いし、ピアノもコンクールで賞を貰うぐらいだし、すごく女の子と話すわけじゃないけど話しかけるとにこにこ笑って性格もいいし。よく考えたら古館君ハイスペックじゃん!」
中身を知っている私からすれば、あんなに手のかかる面倒な子はいないと思うけど、と言いそうになるのを飲み込んだ。
それでも朔良のことが好きなわたしは重症だ。思わず乾いた笑いが出る。それを見た彩香は私が呆れているとでも思ったらしい。憤慨したように頬を膨らませた。
「馬鹿にしたでしょっ!? 双葉は可愛いから勝手にホイホイ男が寄ってくるかもしれないけど、悲しいことに世の中の女の子の殆どは違うんだよー!?」
「別にホイホイしてるつもりはないんですけど」
「またまたー、解ってくれないんだからぁ。双葉は全然認めてくれないけどさ、双葉は結構可愛いんだよ? 男は放っておかないってー」


