恋風吹く春、朔月に眠る君



心当たりがないらしい朔良は『えーっ』と未だに訳が分からないと言った顔で困っている。


「ずっと昔から好きってさっき言ったとこなのに、違う人に告白してるとかとんだ詐欺師じゃん」

「だから、さっき言わなかったんでしょ。嘘だとは思ってないよ」


拗ねる朔良を宥めると、ほっとした顔をした。それからまた考えるような顔をする。


「それって何時の話?」

「中2の年明けかな。朔良と楓が付き合ってるって噂があった頃。体育の授業があるのに体操服忘れちゃって、借りようと思って楓を探し回ってたら、理科室から楓の声が聞こえてきたの。

開いていた扉から声が漏れてたみたい。そこで朔良が『楓のことが好きだからだよ』って言ってるのを聞いた。でも、姿を見たわけじゃないから、誰かと間違えたのかも」


それを聞いていた朔良は暫く考えた後、思い出したように『あっ』と声を上げた。


「それって俺がふざけて言ったやつだ」


すっごい怒られたんだよねと言いながら朔良は教えてくれた。私が楓のことを心配していたから、朔良も気持ちは同じだからと楓の様子をよく見ていたらしい。次の授業が理科だったから早めに理科室に来ていた時、楓が呆れたように言った。

『あんたが好きなのは双葉でしょ? こんなところで油売ってないで振り向いてもらえる努力すればいいのに。あんた何考えてるの?』

朔良がふざけて『好きだからだよ』って言ったら『嘘つきは雷に打たれろ』って怒られたみたいだ。朔良はいつもの減らず口で幼馴染としては好きだし間違ってないから、俺は雷に打たれないね、みたいなこと言ったと思うんだけどよく覚えていないらしい。

兎に角、それに一際楓は怒ったようで、それから中学卒業するまで楓は殆ど朔良と口を利かなかった。急に話さなくなったのはそんな理由があったなんて知らなかった。


「煮え切らない俺の態度が相当気に食わなかったんだろうね」


はははっとおかしそうに笑う朔良にがっくりとした。やっぱり私の勘違いだったのか。それもいつものおふざけ。驚いて逃げてきたりしなかったらこんなこと聞かなくても告白じゃないって分かったのに、アホ過ぎる。