「朔良のバカ」
「ははっ、怒らないでよ。美味しそうだったんだもん」
意味わかんない。意味わかんない。こっちは一生懸命言ったのに。なんで朔良ばっかり余裕な顔して私の反応を楽しんでるんだ。惜しげもなく吐かれるセリフが恥ずかしすぎてまともに顔が見れない。
「もうっ、朔良なんてキライ!」
「えーっ、ごめんって。そんな、怒んないでよ」
困ったような顔をして、満足そうな笑みは隠せてないからなと言いたくなる。でも、朔良の気持ちがそのまま心に流し込まれるみたいに幸せだった。満たされる心が熱くなる。やっと一番言いたいことが言えた。やっと一番言わないといけないと思ってたことが言えた。先に朔良に全部言われてしまったけど、私も今までのこと全部話してもう一度謝ろう。
「ねえ、私の話も聞いてもらっていい?」
「もちろん、聞かせてほしい」
それを合図に私も、中学の時から順を追って話をした。司と付き合っていたのに、楓と朔良ばかりを優先して、司を追い詰めたこと。それによって、別れを切り出されたこと。その時、私が好きなのは朔良だと言われたこと。その時には分からなかったけど、私が好きなのは朔良だと気付いたこと。
「宇津井君、そんなこと言ったんだ。俺が双葉を好きなことは知ってただろうけど」
「えっ、司って知ってたの?」
「うん。俺、双葉と付き合うやつ嫌いだったからね。でも、その中でもダントツで宇津井君嫌いだったね」
あっけらかんと言う様に驚いた。
「なんでダントツ......」
「花火大会の日、好きな子に浴衣着て出てきて恥ずかしそうに付き合ってるって言われたら誰でも妬けるよ。それまでの彼氏は平然と言ってたのにさ。拗ねて煽ったから気付いてるでしょ」
拗ねて煽ったって何言ったんだ。それもその花火大会、私も憶えてる。確かに言うのがちょっと恥ずかしかった。そんな細かいこと憶えてるものなのか。
「呆れた? 俺ってそういう人間だよ。宇津井君の方がよっぽど出来た人間だし、やめといた方が無難だよ」
急に冷めた声が振ってくる。態度やめといた方が無難だよって、さっきまでの言葉はどこ行ったんだ。本当にすぐ、私を振り回す。


