「えっ」
「また、俺のことすごいって思ってるでしょ? それで自信なくして双葉はまた一人で頑張りそう......」
本当に、朔良はエスパーみたいに私のことがよく分かる。黙って頷くと、『やっぱりね』と言う。困った時の癖の曖昧な笑顔が心に刺さった。
「自信がなかっただけなんだ。そうやってケジメをつけないと、また双葉に甘えてこういうことになる気がして、きっと次があったら自分を許せない。俺は双葉との関係を終わらせたくないから、今度は寄りかかって足引っ張るようなことだけはしたくなかった。俺と楓がいて、双葉が自分とは違うと思ってたことは知ってる。でも、俺も楓も特別なんかじゃないよ。何も世界が俺たちの間に線を引くことはない。俺は一緒に手を繋いで隣を歩きたいんだよ。その為だったら俺は頑張れる」
嗚呼、私はなんて勘違いをしていたんだろう。自分という檻の中でもがくのは私だけじゃなかった。朔良も同じように自分の弱さがあって、それに対して必死で向き合って前を向いているんだ。それは簡単なことじゃないことくらいわかっていたはずなのに、どうしてそんな酷い勘違いをしていたんだろう。きっと、ずっとその認識に傷ついていたのは私じゃなくて、朔良だ。
私を置いて行ったりしない。初めてそれを理解して、また目に薄い膜がじわりと溜まるのが分かる。自分の愚かさに嘆くのは私だけじゃない。それでも前へと一緒に進める関係がいい。朔良はそう言っているんだ。
「朔良....わた、し.....ごめんね......」
今度は留めておくことができなかった雫がぽたり、ぽたりとテーブルの上に落ちる。イスから立ち上がって、ハンカチを取り出した朔良が私の目元に触れて、優しく拭う。
「謝らなくていいよ。大丈夫だよ」
また優しく頭を撫でてくれる。その優しさが身に染みて、また零れそうになった。
「私って泣き虫なんだ......」
「知ってる。大丈夫、嫌になったりしないよ」
優しく笑う笑顔に胸が苦しくなった。やっぱり、朔良はすごいよ。でも、もうそれに絶望したりしない。きみも苦しんで、それでも前を向いているんだから。私も同じように頑張りたい。一緒に成長できればいいね。私にとってきみは誰よりもかっこいいよ。
「あれからずっと考えて漸く向き合えた。ちゃんと話してこなくてごめんね。こんな自分を知られたら幻滅されると思ってた。嫌われるのが、怖かった」


