恋風吹く春、朔月に眠る君



「あのさ......」

「この前は大嫌いなんて言ってごめんね!」


謝らなきゃ、謝らなきゃという想いが先走り過ぎて、朔良が言いかけたところに被せるような形になってしまった。朔良は驚いたように目を見開く。でも、落ち着いた様子で続けた。


「いや、謝るのは俺の方だよ。ごめんね。俺が先に話してもいいかな?」


穏やかな笑みを浮かべつつ、私の方を見る双眸は真っ直ぐと真剣なものだった。その瞳に私は吸い込まれたように釘付けになって瞬きさえもかなわない。今度は私が驚く番だった。唐突に、意味が分からない話をすることはよくあっても、ちゃんと、話してもいいかなんて聞くこと、今までなかった。だから、朔良の話を優先したくて、こくりと頷いた。


「俺が今日と昨日、学校に行かなかったのは、双葉にちゃんと話す前にけじめをつけたかったからなんだ」

「.....けじめ?」

「そうだよ」


落ちた沈黙が一層、空気を引き締める。朔良の唇の動きを私はじっと待った。


「俺と双葉と楓、昔はずっと3人でいたよね。俺はその空間がすごく好きだったんだ。でも、双葉は社交的で誰とでも仲良くなれるから、いつかどこか眩しいところへ行ってしまうんじゃないかと思ってた」

「待って、それは違う。眩しかったのは私の方だよ。2人は2人の世界観があった。そこからブレることなんて一切なかった」

「うん、知ってたよ。嫌なわけじゃないけど、双葉が居づらいと思ってること」


私も3人でいるのは楽しかった。私の帰る場所だった。でも、私達の足並みは同じじゃなかった。私は私のペースでは2人の隣で歩けなかった。その気持ちを知っていたってことだろうか。


「俺と楓はマイペースだから、適当にしてても気が合うし、楽だった。でも、双葉はそうじゃなかった。双葉は一緒にいてくれたけど、それは双葉が合わせてくれてたからだ」

「それは私がそうしたかったんだよ。一緒にいたかったんだ」