恋風吹く春、朔月に眠る君



 暗澹たる気持ちのまま学校へ行くと、杏子に声を掛けられた。


「おはよう。この世の終わりみたいな顔してどうしたの?」

「杏子、おはよう。あのね......」


昨日のことを話すと杏子は訝しそうな顔をした。


「それは流石に変だね」

「でしょ? 多分、今日も学校来ないよ。もう気が気じゃなくて......」

「うーん、どこ行ったんだろうね。学校に連絡入れてるんだから、事件とかではないだろうけど。連絡はとれないの?」

「メッセージ送ってみたけど既読つかない」


とうとう杏子も『そっか』とだけ言って考え込んでしまった。杏子にもお手上げのようだ。


「今日ってお昼から入学式あるし、部活ないよね?」

「ないよ」


高校の入学式とか卒業式って関係ない学年は出席しないから、基本的に式の間に学校にいるのも認められていない。だから、部活もない。


「じゃあ、もう一回朔良くんの家行ってみよう」

「えっ、でも、いないと思うよ?」

「もしかしたら学校行ってる間に帰ってるかもしれないでしょ。何日も学校休んでられないだろうし」


それもそうだ。昨日今日とは午前中で終わりだったけど、明日からは一日通常授業。朔良は勉強ができる方だけどいつまでも休んでいるわけにもいかない。


「今日は私もついて行くから。ね、行こう」

「わ、わかった......」


杏子の勢いに気圧されて頷いた。