部活が終わる頃には、空が茜色になっていた。途中で彩香と未希に別れを告げて、家の目の前まで帰ってくる。そして、向かいの家を見た。どきどきと心臓が高鳴るのを胸を押さえて誤魔化す。ゆっくりとインターホンを押した。でも、応答はない。
いつもなら、大体おばさんが出てくれる。もしかしたら買い物にでも出かけているのかもしれない。朔良は体調が悪くて気付いていないのかもしれない。でも、どうしても不安は残る。沈む心のまま、私は帰宅した。
その後も気になってちらちらと窓越しに朔良の家を見たけど、日が暮れても朔良の家に電気はつかなかった。体調が悪くて休んでいたはずなのに、何故だろう。おばさんもいるはずなのに、リビングの電気までつかない。
雪がはらりはらりと落ちるように募る不安がとても重たい。急に冬が戻ってきたみたいに心が寒い。そわそわとして落ち着きのない心のまま、眠りに落ちた。
ざわざわと風の音が鳴る。他には何の音もしない。真っ白な空間。前を見ても後ろを見ても、右も左も何もない。暫くそこに立っていると異変が起きた。風の音がやむ。後ろだ。振り返ろうとした時、後ろからとても強い風が来た。それと同時に白っぽいものが一緒に流されやってくる。
「.......桜?」
服についたものを取ると、桜の花弁だった。嗚呼、この夢、何度も見た。
「......がい。今日が.........ひ。どうか、思い出して」
いつも鮮明には聞こえない声。でも、毎日毎日、少しずつ聞こえてくる声は悲痛な願いを口にしている。
「もしかしてあなたは......!」
気付いた時、目が醒めた。手を伸ばして、いきなり飛び起きた自分に驚く。
「あれ、私寝てたんじゃ......? また夢を見た.......?」
こめかみに手を当て、はあ、と溜息を吐く。こんなことばかりだ。夢の内容はやっぱり覚えてない。
「なんかすっごく重要なことに気付いたと思ったんだけどなあ」
何故そう思うのかは分からない。でも、そう思えて仕方ない。今見た夢の内容を思い出そうと必死に巡らせるけれど、やっぱり思い出せなかった。


