「そうです。ずっとそのご友人が待っていたことに、貴女は気付いたのでしょう? 貴女が自ら相談してくれることを。だったら、やるべきことは一つではないでしょうか」
「今更どんな顔して会えばいいの? 初めて杏子と喧嘩したの。一度もあんなこと言われたことなかった。もうこれ以上嫌われたくないよ」
「それはきっと向こうも同じです。もしかしたら言い過ぎたと後悔してるかもしれません。もう二度と顔も見たくないかもしれません。でも、それは話してみないと分かりません。それより今はずっと力になりたいと待っていてくれていたご友人を信じて会いに行くべきなんじゃないですか。今、貴女が逃げたらこれからも気まずいままですよ」
今の私を咎めるようにぴしゃりと言い放たれた。自然と背筋が伸びる。
「すれ違っても良いです。喧嘩しても良いです。でも、そこに誤解があると分かっているのなら、それがとても大切な人なら、全力で向き合うべきです。拗れて縺れて糸が解けなくなってしまう前に」
最後の一言が重かった。まるで木花自身のことを言っているようだった。木花は糸が解けないままどうしようもなくなってしまったことがあるのだろうか。ううん、今はそんなことを考えるべきではない。また、信じられないまま自分の中で抱え込んでしまうところだった。
人に自分のことを打ち明けるということがこんなに難しいって初めて知った。すぐに悪い方向に考えて、自分の中に押しとどめてしまう。こんなのは良くない。
「私ね、今気づいたけど相談するのって苦手みたい。杏子にも上手く話せるか分かんないの。喧嘩もなかなかしたことないからどうやって仲直りしたらいいのか分からないし、私ってできないことばかりだね。でも、頑張ってくる」
「大丈夫です。下手でも真摯に向き合えば伝わります。もし上手くいかなくても、私がまた聞きましょう。上手く仲直りできれば一緒に喜びましょう」
木花はにっこりと微笑む。丁度その時、春の温かい日差しが窓から差し込む。鈍色の雲が居座っていたはずの空はいつの間にか晴れていた。
「今すぐ行ってくるね!」
「ふふっ、元気がいいですね。頑張ってください。上手くいけば、彼のことはそのご友人がきっと助けてくれるでしょう」
「ありがとう。やっぱり、木花にはかっこ悪いとこ見せてばっかだし、頼りっぱなしな気がするよ」
「そんなことないですよ。でも、お力になれたのなら何よりです」
「はははっ、木花はかっこいいね。私も見習わなきゃ。頑張ってくる。明日は始業式だからまた学校来るし報告するね。じゃあ、また明日」
「また明日です。お気をつけて」


