恋風吹く春、朔月に眠る君



私はとても真剣にそう言ったのに、木花はきょとんとした後吹き出して笑った。


「ふふっ、そんなことないですよ。貴女は最初からずっと優しいです。十分、貰っていますよ」


なんで笑っているんだろう。さも当たり前のことを言うような態度に私は困惑した。あの日出会ってから今日に至るまで私がなにかした覚えはない。


「さて、それより、今は貴女のお話を聞きましょう。そちらが先決です。何があったのか、お話してくださいますか?」


急に真剣になったその顔で私はハッとした。そうだ、私は話を聞いてもらうために此処に来たんだ。

それから私は木花に話を聞いてもらって、少しだけ自分の想いを大切にしてみようと思ったこと。でも、朔良に大嫌いと言って飛び出してきてしまったこと。杏子は私が朔良を好きだと知っていたこと。それを話さない私を怒ったこと。それらを丁寧に話した。


「そうですか。少し会っていない間にいろいろあったんですね」

「うん......。なんか、私の駄目さを実感した......」

「そんなことないですよ。彼にちゃんと味方でありたいと伝えたことも、そのご友人に自分の気持ちを言わなかったことも、貴女がたくさん考えて、悩んで、決めたことじゃないですか。何も駄目なことないです」

「そうかな.....」

「そうです」


きっぱりと言い切る木花の優しさに引っ込んだ涙がまた顔を覗かせそうだ。なんで木花の言葉はこんなにも強くて優しいんだろう。私はいつもうだうだと悩んで前を見ることができないのに、木花はいつも開けた道を示してくれる。


「ただ、彼は彼で思うところがあったのでしょう。楓さんであれば良かったと言っていただけでは何を考えていたかまでは分かりませんが、それは本人に聞くのが一番良さそうです」

「うん......でも、どんな顔して会えばいいのか分からなくて......。それに、杏子のこともあるし」

「ご友人の方が分かりやすいんじゃないですか。貴女も同じだったでしょう?」

「同じ?」


同じってどういう意味だろう。杏子と私が同じ? 考えていたことが、思っていたことが、同じ?


「......寂しかったの。何もできなくても、少しでもいいから朔良の助けになりたかったの。でも、要らないって言われたみたいで、寂しかった。それが杏子も同じってこと?」