「何で…宇野くんの携帯番号知ってるの。クラスだって違うのに」

「え?さあ」


 肩をくすめてみせる蓮。唾を飲み込む。


「…あの人のことを本当に…いじめてんの」


 女たらしとか、成績自慢とか、そういう話は正直どうでもいい。蓮が、宇野を虐めているのか、どうか。

 蓮は、ようやく気付いたのか、とでも言うように、可笑しそうに頷いた。


 信じられなかった。冗談だと思いたかった。認知度も高くて学年でも中心にいる彼に限って、虐められているはずないと思った。

 でも冗談にしては、蓮が見せた携帯の発信履歴は確かにその時間、電話をどこかにかけている。

「因果応報だよ。散々あいつの一家には俺ら苦労してるだろ?あいつ言えるわけねぇよ、だって学年中があいつ虐めてんだ。それに、親に告げ口したら半殺しだって言ってるからな」


 到底、嬉しいという気持ちなんてなれない。なれるはずがない。意地汚い真似を蓮がした。私はそれに加担した。

 胸くそ悪いって、テレビや映画でよく聞くけれど、こういう時に使うのかな、と思った。


「なにお前悲しんじゃってんの?え、まさか、宇野のこと好きだったの?」


 ずっと幼馴染で親戚よりも近しい存在だと思っていた蓮の顔は、知らない顔だった。

 私は彼のなにを見ていたんだろう。

 今更だった。

 その時、蓮が少しだけ怖くなった。