すっかり遅くなっちゃったな…。

家の前で自転車を降りた私に、

早川が無言で見せてくれた携帯の画面。

10:55って…、連絡なしにこの時間は、

やっぱりマズイよね。


「大丈夫か?」


って、早川に聞かれて、


「大丈夫だよ」


思わずそう答えたけど。

だって、そう言わなきゃ、

自転車降りて、親に謝りに行きそうな勢いだったから。

私はお姉ちゃんとは違って、

別に、普段、遊び歩いてるわけじゃないし、

これくらいの夜遊び?なら、

たいして怒られることもない、と思う。

そう自分に言い聞かせてから、

私は悪びれることもなく、


「ただいま~!」


思いっきり堂々と玄関のドアを開けると、

パジャマ姿のお姉ちゃんが、腕組みをして立っていた。


「かりん、遅いよ!
さっきからかけてんのに、なんで携帯出ないの!?」

「え?」


明らかに怒ってるその様子に、

慌てて袂からたぐりよせた携帯は、いつのまにか電池切れだった。


「何やってんのよ、もう!
せっかく、ごまかしてあげてんのに、意味ないじゃん」


「…ごまかす?」


「門限厳しくなったら、あんたのせいだからね!」


なるほど、そういうことね。

お姉ちゃんが、理由もなく、

私を助けてくれるなんて、ないもんね。


「かりん?
お姉ちゃん?
かりん、帰って来たの?」


こちらの気配に気づいたお母さんの声がする。


「うまくやってよね」


って言われても、

そんなに脅かされたら、うちに入りづらいんですけど。

恐る恐る「ただいま。」って言ってみても、

お母さんは無言だった。