「わかるけどさぁ、」


そう言ったきり早川は、

続く言葉を探している。

まるで自分のことみたいに、

見たことないようなマジメな顔して考えて込んで。


「片思いのヤツなんて、みんな部外者じゃん。
話したこともない相手のこと、好きになって、
友達に相談したりとか、あるだろ?
お前はさ、そんだけ泣いたり怒ったりしてる時点で、
部外者の域を超えてると、俺は思うけど」


ゆっくり、言葉を選びながら、

自分の考えをきちんと伝えてくれようとする姿に、

胸がじんわり温かくなる。


「一人で抱え込んでるのが苦しいんなら、
ちょっとでも誰かに話せよ。
それでお前がラクになるんならさ。
俺、口堅い方だし」


早川はにやりと笑って、Vサインを突き出した。

私もつられてVサインを出すけど、

すぐに引っ込めて、俯いてしまった。

視線が絡まるその数秒が、

どうしても耐えられなくって。

胸に手なんか当てなくても、

速まって行く鼓動を感じつつ、

今、この状況でときめく不謹慎な自分の心臓を呪った。

幸い、早川は私の挙動不審っぷりには、

気づいてないみたいで、ほっとした。


早川は、ああ言ってくれたけど…、
ホントにいいのかな。


思っていることを口に出して、

それをはっきりと認めてしまうのがコワかった。

さっきみたいに感情的な自分も、

矛盾してる想いを抱えてる自分も、

全部見せてしまうのは、やっぱり勇気がいるから。