朱音side


「死ねぇ!!」


「ッ!?」


突然横から腕を引っ張られ、態勢を崩す。

男の手に握られているのは
苦い思い出を呼び覚ますナイフだった。

人間は危機を感じた程に
スローモーションに見えるのだろうか。


蒼空が死んだ時もそうだった。


「朱音ッ!!」


悲痛な類の声が聞こえる。

でも、もう避けられない距離だった。


あぁ、駄目だ…。


諦め、ゆっくりと目を閉じる。


おねぇちゃんッ!!


「ッ!!」


蒼空…?


ガシッ!!


「…ッ…痛てぇな…。」


咄嗟に刃を掴んだせいで
ポタポタと手から血が流れる。


「ヒィィッ!!」


血を見た男はナイフから手を離し、後ずさった。

その瞬間を狙って足を踏み出そうとした時、


ガンッ!!


『こっんの糞男!!』


「お母さんに怪我させないでぇー!!」


教えた筈のない踵(かかと)落としを
男に御見舞する可愛い娘達の姿があった。


朱音sideEND